遮断

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どうしてミステリ的な仕掛けをしたのだろうか?
現時点における古処誠二の最新作にして、先般の直木賞候補作。相変わらずの戦争小説で、時系列があまり整理されていない点が気になって、序盤はなかなか作品世界に入り込むことができなかったが、慣れてくるとすらすら読める。しかし、戦火の沖縄を行く逃亡兵の描写の中に思わせぶりに挟み込まれる「現代の手紙」の文章が作為的で時折煩わしい。しかも、この作品にはミステリ的な仕掛けが盛り込まれているのだが、この仕掛けがとりたてて何らかの効果をもたらしているとは思えないのだ。テーマと結びついているとも言い難い。
本書はミステリ的な仕掛けが却って戦争小説としての完成度を下げてしまった作品だと思うが(夾雑物としか思えない)、こういう仕掛けを織り込まないと読者が楽しんでくれないのだとしたら、これは作者の責任ばかりとは言えないような気がする。そういう意味では不幸な作品だと思った。一方で、戦争小説を書くのなら、戦争エンタテインメントを書くのか戦争(または戦記)文学に徹するか、どちらか決めたほうが良いと思うのだけれど。
面白く読んだが、上記の理由により不満が残った。