武州公秘話*1

武州公秘話 (中公文庫)

　かつて、ぼろぼろの新潮文庫版で熟読した妖美あふれる傑作が、中公文庫から再刊された*1。見事な書きっぷりは、三島由紀夫をして〈大谷崎〉と言わしめただけのことはある。伝奇小説好きなら未完の『乱菊物語』ともども必読の名編。

*1:「可哀相な姉」「兵隊の死」など心に残る傑作掌編を発表した作家であり、〈新青年〉の編集者でもあった渡辺温は、この小説のために谷崎邸を訪れた帰り、踏切事故で若くしてこの世を去った。