死神の精度

死神の精度

死神の精度

短編小説ならではの面白さを楽しめる技巧的な一冊、という点ではこの著者の旧作『チルドレン』を凌駕する。ファンタスティックな味わいが素敵な、久々に伊坂作品らしい素晴らしい出来栄え*1。表題作は日本推理作家協会賞を受賞しており、全体を通して優れたミステリとしても楽しめる。

*1:なお、デビュー作『オーデュボンの祈り』から読み続けている当方にとって、伊坂幸太郎を〈春樹チルドレン〉のひとりに数えるのはかなりの違和感がある。この書き手を殊更に〈春樹チルドレン〉と形容したがるのはおそらく『重力ピエロ』から読み始めた読者だと思うのだが、果たして『重力ピエロ』は(出来栄えは別として)この作者の本領だったのだろうか?