縄田一男&時代劇マガジン編集部による、平成元年以降に刊行された時代小説・
歴史小説のみを取り上げたブックガイド。昭和以前の作品をばっさり切り捨て近年の作品に絞った編集方針は、まさに「名作はもう知っているから、近年の傑作に何があるか知りたい」というこちらの希望に即したもので、たいへんありがたい。とくに、近年異様なほどの活況を見せる時代小説の書き下ろし文庫について(短いながらも)まとめてくれているのはきわめて有益。一般読者が手を伸ばさず、限定された読者のみが手に取るのだが、その読者の数が甚大(
トップランナーである
佐伯泰英の売れ行きなど凄まじいそうだ)、月々刊行される点数のほうも膨大という意味で、時代小説書き下ろし文庫と
ライトノベルはもはや近似した状態にあり、分け入ってゆくための手引書が欲しかったところなのだ。
ほか、
宮部みゆきや
山本一力のインタビューが収録され、映像関係についてまとめたコラムも充実しており、お買い得の一冊。