漆黒の王子

漆黒の王子

漆黒の王子

『水の時計』で横溝正史ミステリ大賞を受賞した著者の受賞第一長編。きわめて個性的で、ヤクザ世界の冷酷な抗争を描いている反面、仕上がりは過剰にファンタスティック。陰鬱なメルヘン。計算なく筆を進めているように思える割には、タイトルに三重の意味を持たせていたりする。とにかく特異な才能という感じで、作品としては『水の時計』のほうが好きだし完成度的にも軍配を挙げるが、しかしこの『漆黒の王子』のほうがある種の不気味な才能を感じさせる。いやはや。