ボーナス・トラック

ボーナス・トラック

ボーナス・トラック

車に轢かれて幽霊となった青年と、彼の姿が見える青年との間に生まれた奇妙な友情。ファーストフード店を舞台に展開されるユーモア青春小説。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
冒頭こそどうでもいい説明が延々と続いて先行きを不安にさせたが、その後は軽い語り口と深刻ぶらない会話が続き、一気呵成に読み終えることができた。ラストに軽い意外性が仕込まれているところも楽しい(但し、それを目当てに読むべき作品では決してないが)。さらに後半、心が暖かくなるような場面がいくつか設けられているのが印象に残った。読者を感動させようとか泣かせようとか、そういう姑息な意図で描かれたものではないと伝わってくるような描き方で、素直に暖かな気分になることができる。
というわけで、辛口のストーリーしか受け付けないという読者以外には広くお勧めできる快作。語り口に無神経な荒っぽさが残ってはいるが、今後洗練されてゆくことを期待したい。