落語娘

落語娘

落語娘

書き下ろしの表題作に、著者のデビュー作となったオール讀物新人賞受賞作「ええから加減」を併載した一冊。落語や漫才に己の人生を賭ける女性を描いた芸道小説。
参った。デビュー作の短編「ええから加減」、これは傑作。こんなに上手く話が進むはずがないとも言いたくなるが、同時にそんな指摘は野暮の骨頂と思わせる、そんな魅力に溢れている。現実など吹き飛ばす爽快さに満ちた逸品で、主人公が漫才の相方に向かって言い放つ256ページの台詞には胸が熱くなった。
表題作『落語娘』は「ええから加減」に比べると中途半端な出来であることは否めないが(長さにおいても内容の詰めにおいても)、それでもこちらも面白い。序章で描かれる明治時代の風景も意外や堂に入ったもので、案外書こうと思えばこの作家は捕物帖なども書けるのではないかと思った。
この書き手の初の著書となった『シネマ・フェスティバル』(講談社)は未読だが、機会を見つけて読んでおかなければ。久しぶりに登場した、力強い語り口を持った新鋭だと思う。今後の活躍に期待。