一週間のしごと

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

青春小説の衣を纏った純正サスペンス・ミステリ。〈ミステリ・フロンティア〉第20回配本作品。
シンプルなサスペンス・ミステリで、こういったタイプの作品は久しぶりに読んだ*1。意外性のみを求めるミステリマニアは満足できないかも知れないが、この作品の場合、意外性より展開の面白さとサスペンスを重視したのは明らかに正解だろう。最初は漫画の如き明るい作風で始まるが、次第にダークなイメージにシフトし、終盤にはきちんと〈敵〉との対決場面も用意されている。南京錠という些細な小道具からどす黒い悪意を引き出してみせる手際に作家としての確かな手腕を感じた。
これまでの作品とは大きく作風を変えた印象だが、永嶋恵美は案外この作品で金鉱脈を掘り当てたかも知れない。ミステリとしての充実度、意外性は前作『転落』(講談社)のほうが上だが、小説としての面白さは本書のほうが上。いずれにせよ次回作が楽しみだ。

*1:本格ミステリの隆盛とサイコ・スリラーの失墜で、昔サスペンス・ミステリと呼ばれていた類の作品はほとんど見かけなくなってしまっていたが、最近はむしろライトノベルの方面からこのサスペンス・ミステリが復興を遂げつつあるのが面白い。片山憲太郎電波的な彼女』(集英社スーパーダッシュ文庫)や桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(富士見ミステリー文庫)などはその最たる例だろう。