密謀の王宮
- 作者: 磯部慧
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2002/07
- メディア: 単行本
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この作者はかつて磯辺立彦名義で大和書房から『フランス革命殺人事件』という作品を上梓しており*1、『密謀の王宮』はその『フランス革命殺人事件』の前日譚にあたる。『フランス革命殺人事件』で探偵役を務めたラウル・フェルタンの幼少の頃、デュ・バリ伯爵夫人のもとに奴隷として献上されたあたりのエピソードが描かれているのだ。ミステリ味は淡く、その興味だけでこの小説を手に取ると幻滅しかねないが、華やかな時代を判りやすく(それはもう、もう少し威厳を込めた文章にしても良いのではないかと思うくらいに簡潔に)描いてあるので楽しく読める。後半の展開が駆け足なのが惜しまれるが、これ以上長くなられても困るので、これはこれで良いのだろう。埋もれたのが気の毒な佳作。そのうち『フランス革命殺人事件』も読み返してみよう。