カタリ伝

カタリ伝

カタリ伝

松本清張賞受賞作家による時代コン・ゲーム小説。
本来なら島村匠の新境地として紹介されるべきだったコミカルなコン・ゲーム小説であるにもかかわらず、その作品を包んでいるのは「やっちゃった」感が濃厚に漂うカバー、そして〈コン・ゲーム〉という用語が書かれていない帯。読んでいて作者が気の毒になった*1
陰惨な小説を書く作家というイメージがあったので、島村匠がこのようなほんわかタッチの明朗な長編をさらりと書き上げているのに驚かされた。ちょっとマヌケ感は漂うが実直な主人公の青年が好感度高く、肝心要のコン・ゲーム部分も(強引な、というか計画があまりに簡単に運びすぎる印象はあるけれど)なかなかよく考えられている。良い意味できわめて軽く読める万人向けの小説なので、繰り返すが装丁がもう少しマシだったら広く読まれていた可能性もあったのではないか。
取り敢えず近いうちに同じ作者の『弁天てんてん』(学習研究社)も捜して読んでみよう。

*1:もしかすると作者の要求の結果かも知れないが。