完全犯罪の女

完全犯罪の女 (光文社文庫)

完全犯罪の女 (光文社文庫)

故・青柳友子の初期長編ミステリ。未読潰しのつもりで読んでみた。
今となってはこの著者の名前を知っているミステリファンが果たしてどれだけいることか……。《ミスティ・ガール紅子》という軽ミステリの人気シリーズを定期的に発表しながら、その一方でフランス・ミステリ風のサスペンスをこつこつ書き続けていた作家。その彼女の出世作となったのが本書。
初期長編のためか表現が洗練されていないし、今の読者にはミステリとしても「呆気ない」と否定されてしまいそうだが、この長編のように、構成にちょっとした仕掛けを凝らした作品は、〈洒落た味わい〉として当時は喝采をもって迎えられていたのだ。そして、懐かしさも手伝ってか、今でも面白く読めた。こういう雰囲気のミステリ、最近はすっかり見掛けなくなってしまったし*1
けれど、やはり「今でも読まれるべき不朽の名作」とは言い難い。青柳友子の作品で今も読むに耐えるのは短編(作品集『石膏の家』あたり)か最晩年の長編『あなたの知らないあなたの部屋』だろうが、どちらも絶版、後者に至っては文庫化さえされなかったのだよなあ……。

*1:ある意味、こういう作風を継承していたのは今邑彩なのだが、その今邑も最近は新作の話題をすっかり聞かなくなった。復活を求む。