暗い日曜日

暗い日曜日

暗い日曜日

現役弁護士が手掛けた裁判小説。見どころはそこで、裁判システムの記述などしっかりしているのだろうが、小説としては正直物足りない。
朔立木の著作を読むのはこれが初めて。本書『暗い日曜日』は『死亡推定時刻』*1で主人公を務めた弁護士が再登場する話だが、前作を読んでいなくとも何の支障も無く読み終えることができた。で、ミステリとして読めるほどのサスペンスや意外性があるわけではなく、作者自身もその面白さは狙っていないようだから別にそれで良いのだが、普通の小説として読んでも描写や展開に厚みが無く、どこか空々しく感じられてしまうのが残念。主人公が善人すぎるのも気になったが、さらに気になったのは主人公の息子の描写で、いくら最近の子どもが理解不能な存在になっている(と著者が考えている)からといっても、この描き方は子供の知能レベルを低く見積もり過ぎではないか。
装丁は雰囲気があって良いと思った。

*1:光文社刊。新聞書評で取り上げられるなど、かなり話題になったらしい。