包帯クラブ

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

六年ぶりの書き下ろし長編小説なのだそうだ。
……ベタなエピソードのパッチワーク。正直、それ以上の評価をする気にはなれない。『永遠の仔』(幻冬舎)を読んだ際、本質的にこの作家は通俗作家なのではないだろうかと思ったが、その印象はこの『包帯クラブ』でさらに強まった。
しかしそれでも、「傷ついた誰かのために包帯を巻く」というアイデアと、ディノというキャラクターの存在がこの小説の印象を鮮やかにしている点は無視できない。ディノが作中で繰り返し行う行為(テロの被害者の気持ちを知るために、自分がいるテントの中に爆竹を投げ込んでもらうなど)は、悪く解釈するなら平和な国に住んでいる者の驕りのあらわれとも言える。しかし、「なんにも知らないくせに」「わたしの気持ちなんてわかるわけない」という言葉を口にする人びとがいる限り、彼の行為は愚行であっても無駄ではない。飄々とした性格造形も魅力的で、ディノの造形がこの小説の格を一段上に押し上げていると感じられた。
なお、主人公たちが作中で行う各地の方言で会話するという遊び(?)は、東京の女の子たちのあいだで実際に流行っていたものだと数ヶ月前にワイドショーか何かで目にしたことがある。その際、レポーターが地方在住の女の子たちにも意見を聞いてみたところ、あまり好感は持てないという趣旨の回答が返ってきた。たしかに地方出身者にとっては好意を抱けるような遊びではない。心の痛みを主題とした作品で、この方言遊びが導入されているのは意図的になのか無意識的になのか、著者に聞いてみたいと思った。