湖水地方

湖水地方

湖水地方

文藝春秋が細々と続けている〈来るべき作家たち〉シリーズの第四弾*1。新鋭ばかりなので売り上げの見込みはなかなか立たないだろうが、これは良い企画なので、ぜひとも頑張って続けてほしい。
さて『湖水地方』は表題作の中編と短編「シャルル・ド・ゴールの雨女」から成る一冊。著者は2004年に「ヒヤシンス」で第99回文學界新人賞島田雅彦奨励賞を受賞した新鋭だそうだ。表題作は、主人公姉妹の微妙な関係の設定が巧みだし、全体を通し繊細に描かれているので好感は持てるが、いまひとつ印象に残るものがなく、読み終えたらすぐに忘れてしまいそうな内容なのが惜しい。最後に登場する二隻の葦舟も、姉妹のメタファーとしては判りやすすぎたように思う(中島みゆきの「二隻の舟」みたいな)。短編「シャルル・ド・ゴール……」のほうが内容にひと工夫あって印象に残るが(空港での雨女との邂逅を外枠にして自分と叔母との関係を描いている)、記述法などにもさらにもうひと工夫ほしいところではある。これからの作家さんだと思うので、頑張ってほしいと思います。

*1:さながら〈ミステリ・フロンティア〉純文学版。