GOSICKs 春来たる死神

桜庭一樹の、現時点における唯一(?)の連作短編集。ひとつひとつの機械的トリックは既視感のあるものが多く*1、全体にひとつ仕掛けられているトリックのほうも左程目新しいものではないが、しかし効果的に使用されているのでなかなか楽しい。それに、このシリーズを飽くまで杓子定規に本格ミステリとして読んでも意味が無いと思うので、ストーリーが楽しければ良いのだ。安定した面白さ。歴史の渦に巻き込まれてゆくヴィクトリカと一弥の今後が楽しみだ。

*1:しかし、マニアであればあるほど、「このトリックはあの作品で使われていたな」「このトリックはあの作品の変奏曲だな」などと勝手な邪推をしたり懐かしさを感じたりすることができ、結果的には(逆転現象?)マニアも楽しめるのではないか。新作『少女には向かない職業』でも、この面白さが角度を変えて継承されている点を見逃してはならない。