とんでもない旅
- 作者: 香住泰
- 出版社/メーカー: 柏艪舎
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 単行本
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小説推理新人賞受賞作を収録した短編集『錯覚都市』(双葉社)より遙かに読ませるが、辛辣な話にするのならもっとユーモアが欲しいところだし、暖かな読後感の話を書くのならもっと脇役の人物にも愛情を注いでほしい。作者が主人公に感情移入しすぎている結果、他の人物にまで配慮が及んでいないように感じた。脇役にも愛情が感じられたら、「リフレッシュ・ツアー」のラストにとってつけたような印象は持たなかったはずだ。
とはいえ「レジスタンス・トラベル」や「ルネッサンス・ジャーニー」は気持ちの良い主人公再生の物語になっていて、作者の飛躍を感じさせる。ユーモアそれにペーソスが加われば、さらに優れた物語を読ませてくれるかも知れない。そういう期待を繋ぐ作品集だった。ミステリ味は各編ともきわめて薄いが、作者の資質には合っていると思う。