サスツルギの亡霊
- 作者: 神山裕右
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/11
- メディア: 単行本
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実年齢より背伸びをし*1、南極を舞台にして大人のドラマを描こうとしたチャレンジ精神は高く評価されて然るべきものだ。しかしその結果、舞台の壮大さと登場人物の魅力が釣り合わず、そこかしこに稚さが見え隠れしてしまっている。とりわけ主人公の行動原理が子供っぽく感じられてしまうのだ。おそらく作者はハードボイルド的な、一匹狼的な主人公を造形したかったのだろうが、結果的には無鉄砲な我が儘キャラに終わってしまったように思える*2。他の登場人物に関しても、描き分けができているとは言いかねるし、風格が無い。全体的に作者の余裕の無さが感じられる作品だった。
舞台設定は壮大でも良いが、登場人物の造形や彼らがつくり上げるドラマ、そして言葉遣いはもっと身の丈に合ったものを選び取ってほしい。今の年齢でしか描けないものだってたくさんあるだろう。駄作ではないが、今後が楽しみな書き手だけに、今回の作品はちょっと辛辣にならざるを得ない。