狐弟子

狐弟子

狐弟子

おもしろい。
この作家の作品は以前から読んでいたが、『十八面の骰子』(現・光文社文庫)の頃から俄かに面白さが増してきた印象がある。本書は中国唐代の綺譚七編を収録したノンシリーズ作品集で、今回も典雅な作品世界に悠然と浸りながら読み終えた*1。中には(どれなのかは読んでのお楽しみだが)ミステリとして優れた短編も収められていて非常に楽しい。
集中もっとも完成度が高いと思われたのは表題作の「狐弟子」で、狐になることを切望する主人公の少年が可愛らしいが、構成のほうも見事で、切れ味の鋭い短編に仕上がっている。以下「鏡像趙美人」「鳩胸」「雲鬢」「股肉」など、いずれ劣らぬ味わいの作品が並ぶ贅沢な一冊。中国ものに抵抗の無い方には強くお勧めする。

*1:但し本書に収められているのは近年の短編ばかりではなく、いちばん古い「鳩胸」「胸像趙美人」は98年に雑誌に掲載されたもの。近年になって俄かに面白くなってきたというのは飽くまで印象であって、実際には森福都は元から優れた作品を書いていた作家なのだ。