笑わせたるっ

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若手漫才コンビがお笑いグランプリの頂点を目指す。先日読んだ『屋上探偵』(集英社ジャンプJブックス)の著者による青春小説。
お笑いにはほとんど興味が無く、あの業界がいまどういう状況になっているのかもよく知らないが、それでも面白く読めたのはこの小説の本質が熱血スポ根小説であるからに外ならない。主人公の師匠となるのがかつて天才漫才師だった借金取りというのは結構ベタな設定だと思うし、肝心の漫才の中身をほとんど書いていないのはずるいと思うが、それでもまあいいか、と思えるほどにはきちんと楽しめるビルドゥングス・ロマンだった。後味も爽やか。定型に寄り掛かっていると感じられるところも勢いで突破している。読みやすさの点は充分クリアできているので、あとは心に残る文章や台詞をどれだけ紡いでゆけるかが今後のこの作者の課題だと思う。
『屋上探偵』より数段筆が活き活きしているように感じられたので、ミステリは無理に手掛けないほうが良いのかも知れない……。ちょっと残念ではあるのだが。