トリックスターズL

トリックスターズL (電撃文庫 (1174))

トリックスターズL (電撃文庫 (1174))

著者のデビュー作『トリックスターズ』の続編。評判が悪くないようなので読んでみた(ちなみに前作は未読)。
推理小説を模った云々、と帯に書かれているので推理小説の模倣もしくはパロディなのかと思ったら、普通の本格ミステリだった。トリックがあってどんでん返しがあって。真相は最初に思い浮かべたとおりのものだったし、作中で描かれるダミーのトリックにも独創性は見られないが*1、「久々に本格ミステリを楽しく読んだ」という気になったのが我ながら不思議。それはこの作者の力量のためでもあるだろうが、思うに本格ミステリとは無邪気の産物であって、それゆえにライトノベルと相性が良い――という要因も大きいのではあるまいか。これが四六判上製の単行本で刊行された作品なら腹も立つかも知れないが、文庫書き下ろしとしては充分に及第点以上。デビュー作も見つけて読んでみよう。
なお、語り手の性別をわざと曖昧にしているような書き方には何か意味があるのだろうかと不思議に感じられたが(最後まで読んでもとくに仕掛けのようなものは無かった)、もしかして前作で何か仕掛けられていたのだろうか。まさかヒラリー・テイマー教授シリーズ*2へのオマージュというわけではないだろうし。

*1:佐飛通俊『円環の孤独』(講談社ノベルス)のトリックにも近接する箇所があってニヤリとした。

*2:作者はサラ・コードウェル。『かくてアドニスは殺された』『黄泉の国へまっしぐら』『セイレーンは死の歌をうたう』『女占い師はなぜ死んでゆく』の四長編および一短編に登場した、性別不詳(著者が曖昧にし続けた)の名探偵。