暁けの蛍
- 作者: 朝松健
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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瞠目。朝松健の時代小説には「才はあっても野暮ったい」という印象があって、いつの頃からか敬遠していたのだが、久々に本書を読んで「ついにこの境地に達したか」という感銘を受けた。さらなる洗練の余地はまだあるだろうが、前半で語られる一休の半生、後半で語られる世阿弥の足跡、ともに歴史小説としてたっぷりと読ませる。そして、このふたりの生涯を繋ぐのが「暁蛍楼」という幻想趣向で、この構成も見事だ。世阿弥が初めて足利義満の前で「翁」を舞う場面の絢爛たる迫力*1はとりわけ素晴らしく、最近の時代小説の中でも出色の名場面と言えるのではないか。欲を言えば、世阿弥と義満が始めて言葉を交わす場面などはぜひとも挿入してもらいたかったところだが*2、慎ましやかな様子が快い、端整な傑作である。私的「今年のベスト5」候補。