まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

面白かった……とは思うのだが。
便利屋を営む多田と、彼のもとに転がり込んできたかつての同級生・行天の物語。基本的には面白く読ませるのだが、行天の造形があまりに漫画っぽくて時折興醒めしてしまうし、便利屋稼業というユニークな設定を用意していながら結局メインとなる存在は客ではなく二人の主人公のほう、という点も個人的には物足りなく感じた。別に不満たらたらで読み進めていたわけではないが、読み終えるとどうも印象が薄くて不満が残る*1
彼ら二人が依頼を通して出会う人物たちが後の物語にも顔を出す構成は坂木司の『青空の卵』(創元推理文庫)を想起させ、あの作品がお好きな方はこちらの物語も楽しめるのではないかと思う。雰囲気的には半村良の『下町探偵局』(ハルキ文庫)なども思い出した。

*1:この作品を読んで感じたのだが、もしかすると三浦しをんは会話文が不得手な作家かも知れない。印象に残る台詞が無いということのほか、登場人物が喋り始めるとなんとなく漫画っぽくなるような気がする。