145gの孤独

145gの孤独

145gの孤独

横溝正史ミステリ大賞受賞第一作。まだ冗漫なところはあるが、あらゆる面でデビュー作『いつか、虹の向こうに』(角川書店)より上であり、作者には失礼だが意外な拾い物だった。
この作品を書くにあたって著者は連作短編形式を採用しており、序盤は完全に一話完結の物語として読める。殺人事件は一件も起こらず、基本的に「日常の謎」の範囲内で話は展開されるが、その「日常の謎」をハードボイルドの文体で処理しているところが面白い(といっても、前例はいくつもあるので珍しい試みではないが)。
そして、読み進めてゆくと、次第に長編としての構成が浮かび上がってくる。ここが本書最大の魅力で、なかなか巧妙な作品と言えるだろう。暖かみのある文章にも好感が持てるし、最終話に登場する子豚のハナちゃんが卑怯なほど可愛らしく、最後までしっかりと楽しませてくれた。
デビュー作からかなりの飛躍を遂げているので、引き続き書かれるだろう第三長編がとても楽しみになった。チェックしておいて損の無い佳作だと思う。