情けは人の死を招く

情けは人の死を招く

情けは人の死を招く

またしても三十男の一人称が片仮名の「ボク」なので、前作の主人公と同一人物だと思ったら違っていて驚いた。
印象の悪かった『殺してしまえば判らない』に続くシリーズ第二弾。巻末を見たらまたしても第三弾の刊行予告がなされていたので、そんなに出し続ける意義のあるシリーズなのかと意表を衝かれてもう一度読んでみる気になったが、結論としては印象は前作と同じ。あとひとつふたつ斬新なアイデアを組み込んでセンスよく描けばトリック・ミステリの佳作になったのかも知れないけれど、伏線を云々する以前の段階で、解決編ではじめて知らされることが多くて唖然とした。マンションでそんなことが流行っていたなんて!とか。あと、申し訳ないが全体的にダサいのである。三十男の「ボク」(どうもイケメンらしい)が17歳女子の君子を「クンちゃん」と渾名で呼んでいるところなど、正直おぞましいと思った。「開らく」という表記も目障り。
なお、予告されている第三弾のタイトルにどうも聞き覚えがあったので調べてみたら、以前の横溝賞の最終候補作だった。なるほど。しかし、もしデビュー作『みんな誰かを殺したい』がノンシリーズのサスペンス・ミステリだったから出来が良かったのだとしたら、この作者はシリーズものを書かないほうがいいと思うのだが。