黒猫が海賊船に乗るまでの話

黒猫が海賊船に乗るまでの話

黒猫が海賊船に乗るまでの話

文字どおり、黒猫が海賊船に乗るまでの話。少し長いが、楽しめた。
黒猫トマが語るのは、飼い主のおじいさんのところに突如現れた幻の少年のお話。少年はおじいさんに「お話」をせがむ。やがて始まる人形劇。海賊にトリックスター。……というわけで、これは「語られざる物語」を描いた話である。児童文学にしてはあからさまにメタフィクションになっているが、判りやすく描かれていて面白い。400ページ近い長編なので後半はさすがに中だるみしてしまうのが瑕だが、しかし途中にひとつ驚愕の展開が用意されていて度肝を抜かれた。まさか、おじいさんが(自主規制)なんて! しかし、それを踏まえたクライマックスが美しく、この展開しかなかったのだろうな、と思わせた。
ラストでは遂に黒猫が海賊船に乗る。物語って素敵だな、と思わせるラストになっている。作者は本書がデビュー作になるが、相当の力量の持ち主だと思うので、次回作の刊行を楽しみに待ちたい。