闇の底

闇の底

闇の底

B級の読み物。
読んでいる間はそれなりに読み進められるのだが、別に真相は意外ではなく、また犯人の設定が個人的には不快。いま思えばこの作者のデビュー作『天使のナイフ』(講談社)もそうだったが、こういう結末では「クズはどこまでいっても所詮クズである」という結論にしかならないのではないか*1。そのため底が浅く、テーマ性の介在する余地など存在しなくなっている。著者もテーマ性のある小説を書こうと意識しているわけではないと思うが、以上の見地により本書は、一見生真面目な社会派風のミステリに見えるけれども社会派ではなく、ペドフィリア小児性愛者)が次々殺されるという悪趣味な内容のB級ミステリであると言える。そういうレベルでは、(好みではないが)とりたてて悪い出来ではない。

*1:別にそれでもいいのだろうが、自分としては生真面目なフォーマットでこういう結末の小説が書かれ読まれることの意義を考えてしまう。