温かな手

温かな手

温かな手

パートナーは実は、人間以外の知的生命体だったのです。
読みながら考えていたのは、個々の短編の出来よりも、「この連作、どうやって結末をつけるつもりなのか」ということだった。何せ探偵役を務めるのは、ヒトのかたちはしているけれど、ヒトではない知的生命体なのだ。しかしその設定とは裏腹に、連作はとくに謎めいた展開を見せるでもなく、各短編の謎解きを楽しませながら淡々と進行する。いったいどうやって締め括るのか――果たして迎えた結末は、こちらの予想や期待の斜め上を行くものだったけれど、これはこれで綺麗にまとまっていて感心した。シンプルかつ余韻を残すような結末がつけられていて、はぐらかし方が絶妙というか、石持浅海の個性がここにも現れていると言うべきか。いずれにせよ気分良く本を閉じたのは確かだ。
連作としては、今年刊行された四冊の作品集の中では描かれる事件が最もバラエティに富んでおり、「陰樹の森で」と「お嬢さんをください事件」のような、まるで異なる味わいのミステリを一冊の中で楽しめる。個人的には、謎解きとしてはそれほど優れているとは思わないけれども、マイレージを使った「大地を歩む」のユニークな発想が印象に残った。いろいろなところからミステリは生み出せるものなのだな、と感じ入った次第。ユニークな謎を生み出す、という才能は(石持ならずとも)もっと評価されて良いと思う。あとは「酬い」の出来が美しいと感じました。