タルト・タタンの夢

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

ビストロを舞台にした小味な〈日常の謎〉連作。
小噺的な作品に近藤版「美味しんぼ」的なネタがシャッフルされたシリーズで、さくさく読める。近藤史恵の軽量級のシリーズ（整体師や清掃員）は不思議と肌に合わないものが多かったが、これは楽しめた。ただ、いずれもオードブル級の小品なので、いずれはこのシリーズでもメイン・ディッシュが登場することを期待したい。
集中から一編選ぶとすれば巻末の「割り切れないチョコレート」で、これは真相が綺麗に決まった短編だと思う。対して「ロニョン・ド・ヴォーの決意」の真相には、ちょっと納得できなかった。
余談だが、2007年は石持浅海『Ｒのつく月には気をつけよう』（祥伝社）、北森鴻『香菜里屋を知っていますか』（講談社）、そしてこの本と、食事と〈日常の謎〉を組み合わせた作品集が複数発表されたことが印象的だった。