エコール・ド・パリ殺人事件

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)

ああ、なるほど。
メフィスト賞受賞後第一長編。ウルチモ・トルッコにレザルティスト・モウディと、大半の日本人には何ら意味を成さないタイトルのつけ方に垣間見えるスノビズムが、探偵役の青年や奇矯な警部、知的障害者などのキャラクター造形をはじめとして作品全体をそこはかとなく覆っているように感じたが、ミステリとしては真相のある部分に意表を衝かれた。ある意味実も蓋も無いが、この真相の隠し方はユニークで見事だ。但し、本作に《読者への挑戦状》を挟み込んだのは勇み足だったのではないか。最大の驚きは《読者への挑戦状》で作者が求めている解答とは外れたところに位置し、この驚きの部分に気づかなくとも、作者の問いには答えられるのだ。また、犯人当てミステリとしては、問題編終了までの段階で絵画泥棒が殺害犯という可能性を完全には排除できていないのではないか。《読者への挑戦状》を挟み込むことによってミステリとしての価値を若干下げてしまったように感じられ、勿体ないと思った。ただ佳作ではあるし、前作『ウルチモ・トルッコ』より面白かったので(おそろしくステロタイプな人物造形は難だが)、次回作の趣向を楽しみにしたい。