嘘

ここまで鬱々とした話にする必要はなかったのではないか。
帯の「誰が嘘をついているのか?(略)予測不可能、胸に迫る驚愕のラスト!」「ストーリーの鬼才、永瀬隼介版『スタンド・バイ・ミー』!」という文言に興味をひかれて読んでみた。たしかにそういう方向性を狙った内容ではあったのだが、残念ながら巧くいっているとは言い難い。別な方向に仕立て直せばそれなりに面白い話になったような気もするのだが、とにかく作者の狙いが悲劇にしか向いていないので如何せん救いが無いのだ。しかもこの作品に仕掛けられた意外性は案外容易に見抜くことができるので、鬱々とラストまで読み進め、予想どおり暗澹としてしまった。登場人物のほとんどすべてが既に死んでいるという趣向はそれなりに興味深いので、困難を承知で言うが、この趣向は悲劇よりコメディで扱ってみてもらいたかったところ。
なお、この作者の作品ははじめて読んだが、予想より俗っぽい印象だったのでやや驚いた。