プロトコル

プロトコル

プロトコル

それにしても厄介な作家だなあ。
帯には恋愛小説と書いてあるが、それはミスリードと断言できる。ただし、それでは『プロトコル』はいったいどんな小説なのだと聞かれると、さてどう説明したら良いのだろう。某企業で働く女性が水面下での社内抗争に知らないうちに利用され、そのせいで失脚させられた男に恨まれ罠を仕掛けられる話――と内容の説明は簡単にできるのだが、しかしこれが企業小説かと言われると、やっぱり違うとしか言いようがない。ミステリっぽいところもないわけではないが、ミステリとも言い難い。冒頭で恋愛小説であることを否定はしたが、恋愛もわずかながら描かれてはいるのだ。なんとも厄介ではないか。敢えて言えばヒロイン小説なのかなあ。違うような気がするなあ。
なんとも捉えどころのない面白さに包まれた長編で、比較的好感を持って読み終えたが、それにしてもこの作家の場合、ジャンル分け不能の作風は、たとえば桜庭一樹古川日出男のような作家とは異なり、自らの首を締める結果になっているような気がする。もっとストーリーに強引なまでの吸引力があれば良いのだが……。