あぽやん
- 作者: 新野剛志
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/04/23
- メディア: 単行本
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『八月のマルクス』(講談社文庫)で江戸川乱歩賞を受賞した作家の、初の非ミステリ*1。成田空港で働く青年を主人公に据えた成長小説で、序盤は正直そんなに印象的とは感じられなかったことは確か。主人公も取り立てて魅力的とは言い難い。しかしこの作品、三話目くらいからいきなり盛り上がってくるのだ。空港に勤務する主人公の同僚たちが出揃い、主人公は数々の体験の中で自らの職業に徐々に意欲を見せ始める。それに従い、成田空港という舞台も活き活きと輝きを増し始めるのだ。あとはラストまで一気呵成に読み切った。
新野剛志の作品は、筆力は認めるもののミステリとしての弱さ(不自然な点を払拭できない)と不必要な長さがどうしても気になったものだが、ミステリから離れ連作形式を採用した結果*2、これまでのキャリアの中での最高の作品を書き上げたと思う。たとえば乃南アサの『ボクの町』(新潮文庫)のような作品がお好きな方には(あれほど感動を煽るようには描かれていないが)断然のお勧め。